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ぶちうま!山口県が誇る小麦『せときらら』

2021.05.31

こんにちは!まっちwebライターのなっちゃんです。
山口県の情報を日々発信しているので、この記事をご覧の方は山口県の方が多いかと思います。


さてここで皆さんに質問したいのですが、
「山口県民が全国的に誇れるもの」って何が思いつきますか?

ふぐ、獺祭、錦帯橋、角島、吉田松陰、金子みすゞなどなど・・・
パッと思いつく物もたくさんあるとは思いますが、実は知らないだけでまだまだ誇れるものが存在します。

今回は身近にありながら知らない方も多い、県産小麦『せときらら』についてのお話です。

「山口県産の生産品を届けたい」

そのような想いで育てられてきた『せときらら』。

その魅力に迫っていきます。

1.『せときらら』が生まれるまで

皆さんは、山口県産小麦である『せときらら』をご存知でしょうか?
「もっと山口県の人に県産小麦を知ってもらいたい」
という想いの下、生産農家を始め多くの方が力を入れて消費を促している小麦です。


実際に山口県の給食パンは県産小麦が90%、残り10%も県産米粉と地元食材から作られています。
地元食材を100%使用した給食パンは全国でも珍しく、力を入れて取り組んでいることがわかります。
今では給食パンとして普及している『せときらら』ですが、誕生までの道のりは決して簡単なものではありませんでした。

『せときらら』について教えてくださる『三丘文庫』の徳永さん

話は平成7年にさかのぼります。
周南市八代に、パン工房を含む八代農産物加工所が出来ました。
その際に「せっかくなら国産小麦でパンを作りたい」と、徳永さんは山口大学の准教授の高橋先生に相談されました。
小麦の研究をされている高橋准教授は、当初「国産小麦でパンづくりは非常に難しいのでは」と懸念されたそうです。
相談を機に今ある小麦粉から三丘の土地に合う小麦を見つけようと、まずは国内外の小麦を植えて実験しました。

徳永さんと高橋准教授がそのような研究を重ねる中、平成12年に九州の農業試験場で『ニシノカオリ』という小麦が開発されました。
山口県産小麦100%の給食パンをつくるという目標があり、平成15年に『ニシノカオリ』を奨励品種に指定して、栽培テストを試みました。
テストを開始した時に県からの依頼で『三丘文庫』さんもテストに参加されました。
そして、平成24年には山口県産「ニシノカオリ」によって学校給食のパンの原料となる小麦粉を全て100%県内産にすることができました。

しかし『ニシノカオリ』は収量性が少ないこと、焼きあがった後すぐに硬くなってしまうことから品種改良が必要とされていました。
それでも、
「山口県の子どもたちに、県産の小麦を食べさせたい」
という想いの下、地元に適した小麦を研究する毎日でした。
そんな中、農研機構西日本農業研究センターで『せときらら』が誕生しました。

『三丘文庫』さん『せときらら』100%のパン

『せときらら』は収量性が高く製パン性も優れている品種となり、今まで県産小麦を使用してこなかったベーカリーでの使用が期待されました。
そして期待通り、現在では県産小麦に込められた生産者の方達の想いに共感したベーカリーが『せときらら』を使用したパンを販売しています。

2.地産地消が難しい小麦を届ける

皆さんは自分が食べている小麦の産地を気にしたことはありますか?
おそらく、小麦の産地を気にして商品を選ばれている方は少ないと思います。
産地を意識しづらいのは、小麦の製造方法に理由があります。

小麦は農家で栽培し収穫されると一度JAが集荷し、製粉工場で小麦粉にし問屋に卸されます。
そしてパン屋さんがその小麦粉を買い、パンを製造します。
小麦はパンやラーメンなどの麺類に形を変えて消費者に届くので、一般消費者の私たちは小麦の産地どころか「小麦が形を変えたこと」すら意識しないことが多いです。

このような理由から一般的に小麦は、他の生産物よりも地産地消がしづらいと言われています。

さらにパン屋さんの目線で考えると、また違った『せときらら』の一面が見えてきます。
パン屋さんにとって今まで使用してきた小麦を『せときらら』に変えると、パンの味やレシピが変わってしまいます。
『せときらら』の特徴を理解し、それに合ったレシピを考えなければなりません。
そのため『せときらら』を新しく取り入れるパン屋さんはまだ多くありません。

このままでは『せときらら』を使用するパン屋を増やし消費を促すことが難しいと考えた『三丘文庫』の徳永さんは、平成15年から『三丘パン研究会』を開催されました。

三丘パン研究会では、パンづくりに興味のある方なら誰でも参加することができます。
現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため非公開で開催されていますが、取材のために例外で参加させていただきました。

一般的に「パン教室」と言えば、二次発酵まで出来た生地を成形してパンを焼くと言う形が多いのではないでしょうか?
『三丘パン研究会』は研究会と言われるだけあって一味違うのです。
参加者と一緒に育てた『せときらら』を使って生地にすることから体験できます。
小麦の比較をしたい方は既存の小麦を持参したり、発酵させ持ち込んで焼いたりもされる方もいらっしゃいます。

ダッチオーブン

生地を成形した後は、旬の野菜を使ったピザやオリジナルの具材が入ったパンを石窯やダッチオーブンで焼きます。
思い思いのパンに近づいていく過程を楽しめるのが『三丘パン研究会』。
さらに焼きあがったパンを一緒に食べ、それぞれ評価をし合っています。

理想の食感、気温、湿度を考えながら、水分量を調整したりダッチオーブンで焼いたり・・・
参加者の方が「食べたいパンになるように、1から自分で考えて作る」
それが『三丘パン研究会』です。

作った『せときらら』を使用したパンと、それ以外の小麦を使用したパンを実際に食べ比べさせてもらいました。
『せときらら』は想像していたよりも、もちっとしていて柔らかいのに口の中で溶けていくような食感でした。
そして何より、小麦自体の味をしっかりと感じることができました。

さて、ここで私も実際に『せときらら』の小麦を使用し、ピザを作ってみました。
自分で生地の材料を混ぜ合わせ、手でこね、発酵や焼き上がりを見守っていると、生地に愛情が湧いてきます。

ピザを切らせてもらいました。難しい・・・

こうして焼きあがったピザは、自画自賛にはなりますがなんだかとっても美味しく感じました。
『三丘パン研究会』では、『せときらら』を使用したパンを美味しく焼き上げる研究だけでなく、パン作りを通して県産小麦を使ったパンを食べるという経験ができます。

20%未満の小麦の自給率を少しでもあげたいと考えた徳永さん。
小さな三丘地区から始まった『せときらら』は今、岡山県や京都府でも栽培され全国的に広がりつつあります。
三丘地区をはじめ山口県から他県に、外麦ではなく県産小麦の消費を願うバトンは渡されました。

『せときらら』はありふれた小麦ではなく、たくさんの人の願いと20年にも及ぶ努力のおかげで生まれた小麦でした。
実際に『せときらら』を使ったパン屋さんで、パンを食べてみたいと思った読者の方も多いのではないでしょうか?次に『せときらら』を実際に使用しているパン屋さんをご紹介します。

3.『せときらら』を使ったパン屋さん

それでは、『せときらら』の小麦を使用したパン屋さんを3軒ご紹介します!
どのお店にもキラっと光る個性があり、ぜひ食べてもらいたいパンばかりです。
それぞれのお店ごとにもっと詳しく記事を作成していますので、合わせてご覧ください。

まず1軒目は周南市にある『Le Grand Ballon』さん。

フランスのアルザス地方で修行されたパン職人歴10年以上の西村さんが焼くパンは、絶品です。
一度食べると、何度も通いたくなるおいしさです。
休日だとお昼過ぎにはパンが売り切れてしまうこともあります。
『せときらら』100%の『リュスティック』は、小麦の甘さとしっとりした味わいを感じられます。


2軒目は鹿野にある『子たぬきのパン』さん。

カメやハリネズミの形をしたパンがとっても可愛くて、食べるのがもったいない!と思ってしまいます。
こちらのお店は、原材料のみならず、パンを焼く燃料も地元のものを使われています。
こちらのパンを食べると、鹿野の空気や豊かな自然、人の優しさを思い出すことができます。
店主のうめざわさんの笑顔が素敵で、また来たいと思う魅力の1つです。


最後は周南市三丘にある『三丘文庫』さん。

パン屋さんなのに店名に文庫が入っていて、本を連想させるだけでなく演奏スペースもあるこちらのお店。
本を読んだり、演奏したりできるようにクリエイティブスペースを併設したパン屋さんです。
『三丘文庫』の徳永さんは『三丘文庫』の徳永さんは国産小麦(現在は山口県産小麦『せときらら』)の普及率向上をライフワークとしている方で、今でも県産小麦の魅力を伝えようと様々な場面で活躍されています。
また今回の記事でもご紹介した『三丘パン研究会』も主宰されていて、多くの方がパン研究会に参加し『せときらら』を使用したパン作りに励まれています。

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4.まとめ

今回は山口県産小麦『せときらら』を特集しました。
山口県には『せときらら』というかけがえのない小麦があり、生産農家の方だけでなくたくさんの方の願いが込められています。
私たちがパンを食べるまでの過程に、こんなにも想いが詰まっていると思うとワクワクしませんか?
「当たり前のように思えて、当たり前じゃない」
そのような地元の発見を、これからも届けていきたいと思っています!

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この記事を書いた人

なっちゃん

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三度の飯よりビールが好き。食べることも大好きです。今日も食べログの星を数え、おいしいお店を探しています♪下松市在住。