『せときらら』で届けるフランスのパン文化
2021.05.31
こんにちは、 まっちWEBライターのなっちゃんです。
前回は山口県産小麦『せときらら』について特集しました。
記事を読んで、
「『せときらら』の魅力はわかったけれど、一体どこで県産小麦のパンが食べられるの?」
とパン屋さんを探されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな皆さんに朗報です。
今回は山口県産小麦『せときらら』を使用したパンが食べられるベーカリーをご紹介します。
第1弾は、日本食材でフランスのパン文化を楽しめる『Le Grand Ballon』(ルグランバロン)さん。
オーナーの西村さんに、県産小麦の魅力を教えてもらいました。
1.県産小麦『せときらら』へのこだわり
徳山駅から徒歩20分、周南市美術博物館近くに店舗を構える『Le Grand Ballon』さん。
お店のすぐ下にある駐車場に着いた時には既に、パンを焼く良い香りがします。
「日本の食材を使い、フランス文化を伝えたい」
と仰る西村さんが焼くパンは、一度食べたら誰もがリピーターになるほどのおいしさです。
開店時間の9時前からお客様が列を作り、オープンを待ちわびていらっしゃいました。
多くのファンの心を掴む西村さんに、県産小麦にこだわっている理由を教えてもらいました。
たくさんの小麦がある中で、西村さんはなぜ県産小麦を使われているのですか?
県外から山口県に来て初めて、県産小麦『せときらら』の存在を知りました。
そして「山口県で生産した小麦を使ったパンを食べてほしい」という生産者の方の想いから、山口県の給食パンの小麦は『せときらら』であることも知りました。
しかし、「県産小麦を使用したパン」ということを知らずに食べている人が多く、小麦農家の方とお客様の間に立つ僕が『せときらら』をメインに使うことで、生産者の方の想いを届けたくて使用しています。
そうだったんですね。
県外から来た西村さんだからわかる地元食材の良さもありますよね。
実際に使用して『せときらら』は思った通りの味わいになりましたか?
『せときらら』は想像以上のおいしさでした。僕は口に残る食感のパンよりも歯切れのいい食感を理想としています。
さくっと歯切れがいいだけでなく、同時にみずみずしさも感じる小麦だったので、これは理想の味になると確信しました。
多くの小麦を使用して試作した中、選ばれたのは『せときらら』でした。
理想のくちどけを追い求めたからこそ伝えられる県産小麦の魅力を感じました。
素材だけでなく、パンを作る過程の全てにこだわっているパン作りについてもお聞きしました。
2.小麦の香りが最大限に引き出される製法
西村さんが焼くパンは、甘みが感じられパン自体の味わいを楽しめることが特徴の1つでもあります。
どのような工夫をされているのか気になったのでお聞きしました。
パン自体に甘みがあってとてもおいしいのですが、どのような点を工夫されているのですか?
まず生地に水分をたっぷり加えることで、しっとりした味わいにしています。
通常のパンは60~70%の水分ですが、うちではパンによっては90~100%の水分を加えています。
他には、じわじわと時間をかけて、生地を発酵させています。
一般的なパン屋では当日の朝に生地の仕込みをしますが、僕は前日の晩からゆっくり発酵させる『オーバーナイト』という製法を取り入れています。
この製法のおかげで、小麦の香りや甘みを最大限に引き出し、パンそのものを楽しんでもらえる味わいになっています。
パンそのものに味わいがあることに加え、しっとりした食感も持ち合わせているのは、熟練の技と経験によるものでした。
さらに水分を多く含ませることで、しっとりした味わいの中に『せときらら』特有のくちどけのよさがあり、絶妙なバランスです。
食べた人を笑顔にさせてくれるパンを作る西村さんの想いや、修行についても気になり質問しました。
3.フランスの食文化を日本に
フランスで1年修行をされた経験から、『Le Grand Ballon』さんでは本格的なフランスのパンを楽しむことができます。
修行の地は、フランス・アルザス地方でフランスの北東部に位置しており、ドイツの隣にあります。
フランスとドイツが領土権争いをした歴史があり、現在でもフランスとドイツの文化が共存しているような雰囲気を感じられる場所です。
アルザス地方にはフランスで認定された『美しい村』が5つもあり、木組みの家が印象的です。
どの家も鮮やかな色合いで、まるでおとぎ話の世界に迷いこんだような街並みです。
それもそのはず!
アルザス地方は、ディズニー・アニメーションの名作である『美女と野獣』の実写映画でベルが住んでいる街として撮影されました。
今でも美しい景観が残るアルザス地方で修行を重ねられた西村さん。日本とフランスにおけるパン食文化の違いを肌で感じたそうです。
実際にどのような違いがあるのか気になったので、聞いてみました。
フランスのパンと日本のパンの大きな違いって何ですか?
フランスでは粉・塩・水で作ったシンプルなパンが一般的です。
パンを持って帰り、それぞれの家庭でアレンジして食べています。
チーズと一緒に食べたり、ハムをはさんだりアレンジを加えて楽しみます。
言わば、パン屋から家庭の食卓までが繋がっているんです。
一方で日本のパンは惣菜パンが人気ですよね。
焼きそばパンだったり、カレーパンだったり・・・パン屋で完結するのが日本のパンの特徴です。
フランスで愛されているパンと日本のパンには違いがあるのですね。
日本人にフランスのパンを受け入れてもらえるように工夫していることはありますか?
日本では総菜パンが人気なように、パンをアレンジして食べる習慣がありません。
なので、僕が作りたいフランスのパンをそのまま作っても、日本でも同じように受け入れられるわけではありません。
だから僕は、僕が作るパンと合わせて食べてもらいたいチーズを販売したり、コンフィチュールも販売しています。
日本の食材でフランスの食文化を楽しんでもらえたらと思っています。
そうだったんですね。
シンプルなパンをどうやって食べるかをわかっていなくて・・・
よろしければ、おすすめの食べ方を教えていただけますか?
あくまで一例ですが、『リュスティック』のような白小麦のパンの場合はくせの強すぎないチーズをおすすめしています。
『Le Grand Ballon』のパンの中にはライ麦100%のものもありますが、その場合はブルーチーズや魚料理と合わせると酸味が程よく薄れ、組み合わせを楽しんでもらえると思います。
組み合わせはもちろん自由に楽しんでもらえるので、それぞれの家庭で楽しんでいただけたら嬉しいです。
お客様との会話で組み合わせを伝えたり、どんな組み合わせで食べたかを教えてもらえることも喜びの1つです。
改めてお話を聞いてから店内のパンを見てみると、シンプルな味わいが楽しめそうなパンに目がとまりました。
山口県産小麦『せときらら』で楽しむフランスの本格的なパンが気になって仕方がないので、『せときらら』100%の『リュスティック』をいただきました。
一口食べた瞬間、ハード系のパンなのにしっとりしていて食べやすくて甘くて・・・と一気に様々な味わいを口の中に感じました。
このまま何もつけずに食べても充分美味しくて、食べきりそうでしたが西村さんの話を思い出し、そして理性を取り戻しアレンジを加えてみました。
今回は私の大好きなオリーブオイルと塩をつけ、チーズも挟みいただくことにしました。
オリーブオイルと塩をつけるとパンの甘みが引き立ち、チーズの濃厚さがシンプルな『リュスティック』によく合いました。
アレンジして味わいがさらに楽しめるこちらのパンは何度も買いに行きたくなるおいしさでした。
他にも色々食べてどれも美味しかったのですが、特に『クグロフ』が印象的でした。
『クグロフ』はアルザス地方の代表的なお菓子で、フランス国王ルイ16世の王妃”マリー・アントワネット”の大好物だったと言われています。
フランスでは今も、「少しリッチなお菓子」として愛されています。
本場フランスの一般的な『クグロフ』には、干しブドウやアーモンドが使われていることもありますが、『ルグランバロン』さんの『クグロフ』は、プレーン、ショコラ、抹茶味と3種類の展開となっています。
特に抹茶味は、抹茶の濃厚さと『クグロフ』の控えめな甘さがよくマッチしていました。
たくさんの種類を揃えている『Le Grand Ballon』さんなので、通う度にお気に入りのパンが見つかると思います。
ぜひ皆さんも県産小麦を使用したパンを楽しんでくださいね。(『せときらら』以外の小麦を使用している商品もございます。)
4.まとめ
今回は県産小麦を使用したベーカリー特集第1弾で『Le Grand Ballon』さんにご協力いただきました。
生産者の方とお客様の間に立つベーカリーとして「地域に貢献したい」というお話が非常に印象的でした。
また「フランスの食文化を日本にも広めたい」というコンセプトに裏打ちされた技術や製法は、こだわり抜かれたものでした。
そして取材を通して西村さんのパンに懸ける想いを知ると、より味わい深く感じました。
お客様に届くパンの裏側には、このような物語があると感じ取って貰えると嬉しいです。