おいしいパン作りは小麦作りから
2021.05.31
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こんにちは、 まっちWEBライターのなっちゃんです。
前回は山口県産小麦『せときらら』について特集しました。
記事を読んで、
「『せときらら』の魅力はわかったけれど、一体どこで県産小麦のパンが食べられるの?」
とパン屋さんを探されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな皆さんに朗報です。
今回は山口県産小麦『せときらら』を使用したパンが食べられるベーカリーをご紹介します。
第3弾は、周南市にある『三丘文庫』さん。
こちらのお店では、工場で製粉された小麦だけでなく、裏の小麦畑で栽培した『せときらら』も使用してパンを焼かれています。
小麦を1から育て『せときらら』のみを使用したパンを販売し、『三丘パン研究会』も主催されている『三丘文庫』さん。
オーナーの徳永さんに県産小麦の魅力を教えてもらいました。
1.『せときらら』を育てるところから始まる『三丘文庫』
こちらはパン屋さんですが、『三丘文庫』という名前で入り口の正面には、本が隙間なく並べられた本棚があり本屋さんのようです。
横手にはステージもあり演奏会を開催したり、英会話教室もやっていたり・・・
そして、次回177回目(令和3年5月30日)を迎える『三丘パン研究会』では、『せときらら』を使用したパン作り体験も開催されています。(現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、非公開で開催されています)
1つの空間の中に、いくつもの表情を持つ『三丘文庫』さん。
まずは、県産小麦の普及率向上に尽力されている活動をご紹介します。
こちらで販売されているパンの小麦は県産小麦のみで、他は一切使っていません。
『せときらら』にこだわりを持つ店主の徳永さんに、その味わいをお聞きしました。
「何よりモチモチとした食感が魅力です。
一部ではパンチがないという声もありますが、小麦の特徴を理解し生地と会話しながらパンを焼けばモチモチ感のあるしっとりした味わいでおいしいです。
説明する言葉には一つ一つ重みがありました。
徳永さんはお店の裏で『せときらら』を栽培されています。
2時間以上かけて小麦畑一面の草刈りをし、種をまき、1から育てるのは簡単なことではありません。
収穫までの道のりも険しいですが、収穫した小麦でパンをつくることも同じくらい大変です。
自分で作るとなると、小麦に含まれるタンパクに差ができるので、加水の加減も調整しなければいけません。
「誰が、いつ作っても、同じようにパンが焼ける」というレシピは自家製の『せときらら』には存在しないのです。
手がかかる子ほど可愛いように、小麦も手がかかるほど愛情がわきます。
小麦の状態を観察し育て、収穫するまでには長い時間と労力が必要とされますが、それを「全然大変だとは思わない」と話す徳永さん。
会話の端々から『せときらら』に向ける愛情の深さを感じました。
また小麦の安全性にもこだわっています。
海外から輸入される小麦は、収穫して1ヶ月後と時間が空いてから出荷されるので、その間は農薬を使い収穫後の状態をキープしています。
そのため輸入小麦は、収穫後に農薬が残ってしまう可能性があります。
出荷の時に農薬が残っていることはないと言われていますが、より農薬が残っている心配がない『せときらら』は体にも優しい小麦です。
2.『三丘文庫』の石窯パン
こちらの大きな特徴は、石窯で焼かれたパンを販売していることです。
そして、この石窯で焼くことで『せときらら』のモチモチ感がより伝わります。
通常オーブンで30分かけて焼くところ、石窯だと10分で焼き上げます。
時間をかけず高温で焼き上げるので、石窯で焼かれたパンは固くなりにくいです。
表面はバリバリっとした食感ながらも、中はフカフカ、もっちりと一口で二度食感が楽しめるのも石窯パンの魅力です。
もともとモチモチ感がある小麦がより柔らかくしっとり感じるのは、石窯で焼くという焼き方が『せときらら』の食感を引き出しているからです。
外はこんがり、中はフカフカとおいしい石窯パンですが、温度調整が難しい一面もあります。
一般的には200度前後でパンを焼きますが、『三丘文庫』さんの温度は280度から380度で7分~8分と短時間で焼き上げます。
パンが1番おいしく焼ける温度を考え何度も実験を繰り返した結果、通常よりも高い温度で焼き上げることにしたそうです。
時には焼きすぎて表面が真っ黒になってしまったり、でも中は意外とフカフカでおいしかったり・・・
表面のこんがり具合に慌てて、パンを取り出すとまだ焼けていなくて持ってみると重かったり・・・
見た目も中身もおいしいパンを焼き上げるために、徳永さんはこれからも焼き続けます。
また石窯の温度はどんどん下がっていくので、パンを焼く順番も工夫しどのパンも1番おいしい焼き加減になるように工夫を重ねられています。
『三丘文庫』さんでは金曜日12:00~パン工房、土曜日は10時から店内で焼き立てパンが販売されています。
焼き立てパンの情報はお店のインスタグラムで公開されています。
石窯で焼かれた『せときらら』が存分に味わえる焼き立てパンをぜひ味わってくださいね。
3.やってみたいが叶う場所
冒頭でもお伝えしたように『三丘文庫』さんは様々な文化に触れあえる場所です。
入り口正面にある本棚には、八代で有名な鶴に関する資料、山口の歴史に関する書籍、有川浩さんのような現代小説、三島由紀夫のような純文学とジャンルが幅広く図書館として本を読む時間を楽しむことができます。
本好きにはたまらないラインナップではないでしょうか?
本棚を見るとその人の人生や哲学が感じられるように、徳永さんの本棚からは豊かな教養だけでなく、それを受け入れる懐の深さと柔軟さを感じ、「ここに通わせてください!!!」という気持ちになりました。
演奏ステージには本格的な音響が準備されていて、ライブコンサートや朗読会も開催されているそうです。
奏者の方は本格的なセットを見ると、思わず演奏したくなるのではないでしょうか?
(ステージにある本棚に『ハリー・ポッター』を発見しました。マグルにとっても嬉しい発見です。)
英会話教室だったり、映画鑑賞会だったり・・・
芸術、文学、音楽、言語と様々な文化に触れられる『三丘文庫』さんは、三丘に訪れる人の「やってみたい」を実現する空間です。
徳永さんをはじめ色々な方の「やってみたい」という光が、今日もお店を優しく照らしています。
4.まとめ
『三丘文庫』さんは、『せときらら』の栽培から収穫までのストーリーを感じられるパン屋さんです。
私たちが「おいしい、おいしい」と笑顔で頬張るパンの裏側には、たくさんの願いが込められています。
忙しく毎日を過ごす中でも、『三丘文庫』さんに行くとパンのおいしさを感じ生産者の方に思いを馳せることができます。
そしてパンを味わった後は、ゆっくり本を読んだり、音楽を聴いたり、いつも頑張っている自分のために時間を使ってみてくださいね。